その1 「フェノミナン」「フェノミナン」1995年アメリカ ・カラー124分監督 JON TURTELTAUB 脚本 GERALD PIPEGO 出演 ジョン・トラボルタ キーラ・セッジウイック ロバート・デュパル フォレスト・ウィティカー他 正直な所、主演が、あの「サタデーナイトフィーバー」 のジョントラボルタという事で、「大した内容の映画じゃないな」という思いで借りたビデオであったが、 しっかりした脚本と構成、淡々としているが味のある演出、そして意外にも主演のトラボルタのしっかりとした演技力のおかげで、見終わった後に実に気持ちのいい涙が流せる作品に仕上がっている。 料理に例えれば、本場四国の讃岐うどんっといったところか・・・特に味付けしなくとも、妙に咽喉ごし良く、食べ応えもあって、満足できる一品といったかんじ・・・薬味の七味として「ゴッドファーザー」の弁護士役で有名なロバート・デュパル等の脇役陣がいい味を出して盛り上げてくれている。 <ストーリー> ジョージ(トラボルタ)は36歳、独身の自動車整備工。 何人かの気の合う仲間達に囲まれつつも、趣味の自家菜園は野ウサギに荒らされ放題、片思いの相手レイス(キーラ・セッジウイック)にも、なかなか振り向いてもらえないという、いまいちさえない毎日を送っていた彼。 しかし37歳の誕生日パーティの夜、ふと見上げた夜空から大きな光が降りかかってくるのを目撃する。 その時の衝撃で一瞬気を失ってしまったジョージ。だが、その直後からなぜか突然、今まで以上に頭が冴えだしてしまう。 チェスはやたらと強くなり、ちょっと勉強しただけでスペイン語やポルトガル語もペラペラになる。1日数冊の専門書を読みあさり、新種の肥料を開発したり、偶然、無線に入ってきた国家機密に関する複雑な暗号を簡単に解明してしまったり、地震の予知や挙げ句の果てには超能力までも身につけてしまう。 ジョージ自身、自分の変化にとまどいながら、次々と浮かんできてしまうさまざまなアイディアを何とか実現に結び付けたくてたまらない、だが突然の彼の変化を最初はたたえていた仲間達も、彼が超能力まで身につけた事が解ってきてから次第に彼を気味悪がり、遠ざけるようになってしまう。 孤独感にさいなまれるジョージ。彼自身なんで自分がこんな能力を身につけてしまったのかと、と惑うばかりなのだ。 だが、ただ1人だけ今まで通り、彼と付き合ってくれる女性がいた。 片思いの相手レイスである。 だが、彼女との恋がうまく行きそうになりつつあったというのに、ジョージには恐るべきある運命が待ち受けていたのであった・・・・。 <<ここが見所!!>> ともかく、全体的にあったっかく、柔らかく、優しいムードのただよう映画である。 私が一番好きなのは、レイスがジョージの髪の毛を切ってあげるシーン。 片思いの女性レイスがジョージの事を心配して部屋を訪ねてくるシーンがある。話の流れから、二人の愛情が燃え上がっている感じでここで当然、抱き合ったり、セックスしたりになりそうなのだが、それをあえて「散髪」という行為で、表現している。 このシーンのカメラワーク、カット割、二人の演技・・・とてもいい。 やわらかな午後の陽射しの中で、優しく上着を脱がせ、シーツをかぶせ、髪を濡らし、カットする・・・アップを多用し、狭い画のなかで彼女に身を委ねる様にして髪を切られていく男・・・実に幸せそうであり、安らいでいる。そしてシェービングクリームを塗り、男の髭まで剃ってやる女・・・ もう、これは完璧にセックスなのだ!! それにしても、この恋人役のキーラ・セジウィックというう女優さん。私好きです。別に美人でもなんでもないんだけれど、味があるんですね。 ちなみに彼女の旦那さんは、最近では名悪役となってきたケビン・ベーコンです。 そして、ラストシーン・・・詳しくは書けないが これもとっても印象的。人々の優しさや、温かさじわりと伝わってくる、素晴らしい作りになっている。 ちなみにラストシーンのBGMは「チェンジ・ザ・ワールド」 グラミー賞を受賞したエリック・クラプトンの名曲は実はこの映画「フェノミナン」のテーマソングでもあったのである。 見終わった後に、ほっこりとした優しい気持ちになる事ができる貴重な映画だといえよう |